●しずおかTIP-OFF（ティップ・オフ）奨学金は

2023年（令和5年）、特定非営利活動法人静岡市障害者協会に「障害のある人が大学等へ進学し、教育を受ける機会を支援したい」と多額の寄付が寄せられました。寄付者の願いを具体化するために企画運営委員会を設け、【しずおかTIP-OFF（ティップ・オフ）奨学金】の給付事業を新設しました。
TIP-OFF（ティップ・オフ）とは、バスケットボールで、試合開始の時に挙げたボールを両選手が弾く動作のことで、以前はジャンプボールと呼ばれていました。基金の寄付者が障害者バスケットボールの選手あったことに感謝の想いを込めて名付けました。奨学金は2024年より給付を開始しています。

●特定非営利活動法人静岡市障害者協会とは

2005 年（平成17年）9月、身体・知的・精神の障害者団体が集まり任意団体として発足、NPO法人になりました。静岡市から「基幹相談支援センター」の運営を委託されている、全国でも珍しい当事者団体です。その後、発達障害、難病の団体等も加わり、2017年（平成29年）11月には寄付金控除団体となる認定NPO法人となりました。また公益社団法人日本非営利組織評価センターの「グッドガバナンス認証」を受けています。委託事業以外に、各団体の連携と支援、権利擁護と社会参加の促進、防災対策、市民への啓発などの自主事業も行っています。

障がいのある人の学びのために

半世紀も前のこと、北米のある集会でひとりの当事者が、「障害者と呼ばれるのではなく、私はまず人間として扱われたい(I want to be treated like PEOPLE FIRST)」と声を挙げました。このときから「ピープルファースト」という呼称が始まりました。ノーマライゼーションや自立生活運動の大きな転機となりました。
その後、当事者が自らの意思や権利を主張する活動は、何よりも医療、福祉そして教育の場において拡がりました。その中心には、「私たち抜きに私たちのことを決めないで(Nothing about uswithout us)」（障害者権利条約） という理念があります。いわば当事者の「“人間”宣言」です。
障がいのある人は、高卒後の選択肢は多くの場合「就労か福祉か」、大学等の進学は数％という現況が長らく続いています。高等教育を受ける可能性や機会がないままに、〈障がい〉を理由として自らのライフステージを狭めざるをえないことも少なくありません。「ガラスの天井」の先はまだ見えていないのです。
この奨学金は、未来あるこどもたちがさらなる高みをめざして学んでいくために準備されました。毎年5名の奨学生が誕生します。一人ひとりが「地の塩」たる働きをとおして、この社会のなくてはならない貴重な役割を果たしていくことでしょう。
この基金を公正かつ恒久的に運営するために、静岡市障害者協会を足場にして「しずおかTIP-OFF奨学金」企画運営委員会が立ち上がりました。行政や企業がもつ豊富な物的・人的資源があるわけでもありませんが、それでも「はじめの一歩」を踏み出すことができました。ここ静岡から、本会は障がいのあるこどもたちと共にかけがえのない未来を拓いていきます。引きつづき皆さまのご理解をいただけば幸甚です。
2024年春、第一期の奨学生5名がキャンパス生活を始めました。今日から明日につなぐ尽きることのない物語が大切に紡がれてまいります。

2024年10月1日
「しずおかTIP-OFF奨学金」企画運営委員会